ユダヤ人の人口は約1400万人。
世界の総人口は2019年時点で約77億人。
圧倒的な少数民族です。
にも拘わらず、ノーベル賞受賞者を多数輩出、世界長者番付には、マーク・ザッカーパーグ氏をはじめ多数のユダヤ人が入っています。
そんなユダヤ人は、さぞかし恵まれているかと思えばそうではありません。
ユダヤ人は、紀元70年に、ローマにイスラエルを征服されて以来、1800年以上世界中に離散しました。移住先では、二級市民扱いされたり、迫害をされたりしました。
特に、ナチス・ドイツによる大量虐殺は記憶している方も多いはずです。
「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクも犠牲者の1人ですね。
過酷な逆境の歴史の中で、なぜ「ユダヤ人は頭脳が明晰」といわれる程に優秀な人材を輩出できたのでしょうか。

その秘密に迫り、私たちも見習えば、少しはユダヤ人に近づけるかも?
成功したユダヤ人の秘密の1つが、ユダヤ人が幼いころから、学んでいる聖典『タルムード』です。
本書には、著者ラビ・マービン・トケイヤー氏によってこの『タルムード』の知恵と解説が抜粋されています。
- 『タルムード』について本書に基づき、簡単に解説します。
- 本書を読んで生活に取り入れたいと思った3つのの『タルムード』の教えを紹介します。
記事を読んで、興味を持った方は、本書を手に取ってみてくださいね。
聖典『タルムード』
タルムードは、「偉大な研究」という意味で、ユダヤ人の聖典です。
ユダヤ民族5000年の生活規範の集大成で、数百年かかって編集されたものです。
例えば、次のようなものがあります。

人間の目は、白い部分と黒い部分がある。それなのにどうして黒い部分から見るのだろうか?

それは、世界を暗い面から見た方が良いからです。明るい面ばかりから見てあまり楽観的にならないように戒めています。
ユダヤ人社会で使われるヘブライ語のヘブライとは、「もう一方に立つ」、「相対する」という意味です。
ユダヤ人は、物事を一方向からだけではなく、もう一方向からの見方を探すように、幼い頃から訓練されています。
「三日、『タルムード』に触れない者はユダヤ人ではない」という諺があるくらいに、ユダヤ人は『タルムード』の教えを大切にしています。

子供の頃から大人になっても常に学び続け、
多方面からの見方ができるようにしているから、成功者が多いのですね
金銭は無慈悲な主人だが、”有能な召使い”にもなる

ユダヤ人は、金銭を良いものだとは言わないし、悪いものだとも言いません。
ユダヤ人には、日本の「清貧」の考え方はないとのことです。
本書の清貧は、「貧しいことは清いこと」という考えを指します。
つまり、ユダヤ人は、貧乏であることが清いことであるとは考えていない、ということです。
お金を悪という見方は、人間の自信のなさであると考えます。
お金が人間よりも上のものと考えているから、お金を怖れることになる、ということです。

ユダヤ人は、お金の主人は人間であると考えます
ユダヤ人は、お金を人間の有用な道具の1つと考えます。
有用な道具なのだから、できるだけたくさん持っていた方が良いと考えます。
その道具をどのように使うかは、お金の持ち主の使い方によります。
お金は使い方が良ければ良いものになり、使い方が悪ければ悪いものになります。

ハサミという道具は紙を切るのに便利ですが、人に向けたら凶器!
お金も道具だから、その人の使い方次第です!
宗教によっては、金銭を持つことを持つことを罪深いものと考えてきました。
ユダヤ人は、金銭に善悪の責任はなく、むしろ「人生でいろいろなことができる機会を与えてくれるもの」と考えました。
古代から、お金について真剣に向き合って、中立な判断をしたからこそ、ユダヤ人には成功者が多いと言えます。

私達も「金持ちは、何かずるいことをしている」ではなく、
お金に対して中立でありたいですね。
つねに”もっと不幸がある”と思いなさい

本書では、次のエピソードが紹介されています。
ある町で男が、ラビ(ユダヤ教の僧侶)を訪ね、訴えました。

私の家は小さい。それにも関わらず、子供は多く、妻は、この町一番の悪妻です!
どうしたらよいでしょう(涙)?

お前が飼育している山羊を家の中に入れなさい。

え?分かりました。
その翌日、男は再びラビの所に来ました。

悪妻に加えて山羊が家の中にいるなんて耐えられません!

それでは、お前が飼育している鶏10羽を家の中に入れなさい。
その翌日、男は三度ラビの所に来ました。

悪妻に山羊に鶏10羽!この世の地獄です。

そうか。
では、山羊と鶏を家の外に出して、明日、もう一度ここに来なさい。
翌日、やってきた男は、すっかり血色も良くなって言いました。

ラビ様。家はいまや、宮殿のようです!
リベラルアーツ大学の両学長の動画でも、似た内容の『タルムード』の話として「あるラバイ最悪で最良の災難」という話が紹介されています。
今起こっている不幸は、さらなる悪いことへの防波堤という考え方です。
ユダヤ人はこれまでの歴史で、国土を失い、離散した先で過酷な迫害を受けてきました。
迫害に屈せず、ユダヤ民族を失わなかったのは、物事を楽観するだけの力を持っていたからだと著者は言います。
悲しさを知っているから、明るさがどれほど貴重か分かります。
夜を知っているから、太陽の恵みを楽しむことができます。

不幸の中にも、幸福を見出す力ですね。
会社に行くのが辛いからこそ、休日の有難みが分かります。
物事をもう一方から見ることで、今起こっている苦しみで潰されないための心のお守りになると良いですね。
あなたの舌には”骨がない”ことを忘れるな

余計な一言や悪口を言って、身を滅ぼすことへの警告です。
「しゃべりすぎるな」、「余計なことをいうな」、「秘密を守れ」
教えても、舌はすぐに忘れてしまいます。骨がないみたいです。
だから、私たちの生涯の運命を支配する重要な体の部分が軟体動物であることを、いつも意識しなければいけません。
私たちは、一生舌と一緒に暮らさなければいけません。
舌はまるで独自の意志を持っているように、ひとりでに動いてしまうこともあります。
いわゆる、「口を滑らす」ということです。
口を滑らせて、人生で大きな損をした人は多いです。
政治家や有名人がよく、発言の撤回や釈明会見をやっているくらいです。
一度口から出た悪口は、その人からその友達へ、またその友達へ、口移しに伝わっていきます。
悪口を言った相手の耳にも入り、余計な恨みを買うことになります。
誰しも1度は経験があるかもしれませんね。
自己を主張することは大事です。同時にしゃべり過ぎは禁物です。
一言を付け加えることはいつでもできます。
しかし、言ってしまった一言を撤回することは非常に難しいです。

特に怒りに任せて言い放った一言ほど後悔することは多いです。
特にSNSでの発言は、光速で拡がるので要注意ですね。
まとめ
今回の記事の内容をまとめます。
- ユダヤ人の聖典です。
- ユダヤ人は幼い頃から『タルムード』の教えを学び続け、多方面から物事を見る訓練を重ね続けました。そして多くの成功者を輩出してきました。
- 金銭は無慈悲な主人だが、”有能な召使い”にもなる
- つねに”もっと不幸がある”と思いなさい
- あなたの舌には”骨がない”ことを忘れるな
本書には、他にも「借金は”かゆいところをかく”ようなものだ」(炎症を起こしている所をかくと余計に悪化させる)、「息子が結婚するときには、母親に離縁状を出さなければならない」(それくらいの女性と結婚しなさい)など、「なるほど」と思う教えが多数書かれています。
5000年以上の歴史がある『タルムード』の教えですが、現代の私たちにも非常に参考になる知識です。

人類は進歩しているようで、一個人としては同じことに悩んだり、失敗したりしているのですね。
各章の最後に金言集があり、そこは教えが羅列されているだけで、解説はありません。
そのため、どういう意味か分からないものは、自分で考えるなり調べるなりしなければならないです。
それが、しんどいかもしれませんが、考える力こそ、ユダヤ人の成功の秘訣だともいえます。
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