資産形成には、倹約、稼ぐ、投資といった行動が大事です。
一方、「資産形成を妨げる行動」もあり、例えば、医療関係だと下記のような行動です。
①お金がもったいないから「調子が悪いのに病院に行かない」
→放置したために、悪化して治療が長引き、治療費も高くつく場合があります。
②「何となく不安だから民間の医療保険に入る」
→何となく不安で保険に入っていたら、お金がいくらあっても足りません。
ダメな行動を避けるため、日本人みんなが加入している優れた公的医療保険を一緒に学びましょう。
今回のテーマは、「高額療養費制度」です。
公的医療保険で窓口での負担が3割になるのは、みんなが知っていることですね。

この3割負担でも、治療費が高くなったらどうしよう?
医療費が高額の場合、お世話になるのが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度を知らない方ももちろん、「月の支払いが10万円以下になるものでしょ」で止まっていませんか。
さらに知識を深めれば、医療費負担を下げることができるかもしれません。
いざ病気になると、動揺し、慌てるものです。
そのとき、この記事が知識のフックになり、損することなく高額療養費制度を活用できると幸いです。
- 高額療養費制度の基本
- 医療費負担を軽減する「合算」制度
- 医療費負担を軽減する「多数回該当」
- 高額療養費の支給申請方法
- 入院する場合に、窓口での支払いを負担の上限額までに抑える方法
- 支給申請の期限
なお、この記事では、主に69歳以下を対象としています。
制度詳細や70歳以上の場合は、下記厚生労働省のリンクをご参照ください。
高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

超複雑な高額療養費制度で、「損しないためにこれだけは」、というところをまとめました。
実際の利用時などは、加入してる公的保険に問い合わせましょう
高額療養費制度の基本
高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
1月から2月まで月をまたいだ場合、1月分は1月分、2月分は2月分として、上限額の判定がされます。
例えば、69歳以下の場合、次の表のようになります。
表の中の医療費は、窓口負担分の3割ではなく、10割の総医療費です。

ただし、入院時の「食費」・「居住費」、患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」・「先進医療にかかる費用」等は、高額療養費の支給の対象とはされていません。

平均年収400万の場合、区分「ウ」に該当すると思います。
その場合、医療費が100万円になっても、月約9万円以下になる感じです。
見逃さないで!「合算」制度
1人1回分の窓口負担では上限額を超えない場合、合算をして、その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給されます。
- 1人の複数の受診を合算
- 同じ医療保険の世帯の他の方が窓口で支払った自己負担額を合算
ただし、69歳以下の受診については、21,000円以上の自己負担のみ合算されます。
21,000円以上の自己負担とは?
69歳以下の場合、医療機関別、入院・通院別で算出されて、21,000円以上のものが対象となります。
例えば、4月に下の表のように病院を受診したとします。
このとき、表中の番号1,2,3を合算できます。


私も合算で申請して、約5万円が戻ってきた経験があります!
知らないとこの金額を失うところでした。。
同じ医療保険の世帯とは?
自己負担額の合算は、同一の医療保険に加入する家族を世帯の単位とします。
医療保険における「世帯」は、住民票上の範囲とは異なります。
例えば、下図のように父、母、娘が一緒に住んでいる(住民票上1つの世帯)場合を見てみます。
父が組合健保、被扶養者である娘も父と同じ組合健保に加入していれば、父と娘は同じ世帯になります。
そのため、父と娘の自己負担額は、合算できます。
しかし、父は組合健保、母は協会けんぽのため、同じ住所でも父と母の自己負担額は合算できません。

下図のように、父、母が一緒に住んでいて、娘が別居している場合を見てみます。
父が組合健保、被扶養者である娘も父と同じ組合健保に加入していれば、父と娘は医療保険上同じ世帯になるため、お互いの住所が異なっていても合算できます。


今まで、自分の分だけだと思っていました。
それに、世帯と言われたら、住民票上の世帯しか思い浮かばなかったです。
見逃さないで!「多数回該当」
過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。
例えば、69歳以下の場合、次の表のようになります。


さらに負担が減るのは有難いです。
血友病、人工透析及びHIVといった非常に高額な治療を長期間にわたって継続しなければならない場合、特例が設けられています。
この特例措置が適用されると、原則として負担の上限額は月額1万円となります。
高額療養費の支給申請方法
どの公的医療保険に加入しているかを、保険証で確認しましょう。
例を示します。
- 大企業勤務の場合、その企業の組合健保
- 中小企業の場合、協会けんぽ
- 公務員の場合、共済組合
- フリーランスの場合、国民健康保険
- 75歳以上の場合、後期高齢者医療制度
加入している公的医療保険に連絡し、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられます。
病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
公的医療保険によっては、自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれるところもあります。
支給は、受診した月から少なくとも3か月程度かかります。

3か月程度の建て替え期間が発生するということです(泣。
入院する場合に、窓口での支払いを負担の上限額までに抑える方法
入院する前に、加入している医療保険から「限度額適用認定証」又は「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受け、医療機関の窓口でこれらの認定証を提示する必要があります。
なお、限度額適用認定証の交付を受けていなくても、後日、上限額を超えて支払った額を払い戻すことは可能です。事前に申請が必要になります。

最初から限度額までの支払いで済む方が精神的には安心です。
支給申請の期限
高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。
なので、「えー!申請してなかった」という人で2年経過していない場合、あきらめずに申請しましょう。
まとめ
この記事のまとめです。
①高額療養費制度の基本
医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
②医療費負担を軽減する「合算」制度
1人の複数の受診を合算、同じ医療保険の世帯の他の方が窓口で支払った自己負担額を1か月単位で合算
③医療費負担を軽減する「多数回該当」
過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。
④高額療養費の支給申請方法
加入している公的医療保険に連絡し、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられます。
⑤入院する場合に、窓口での支払いを負担の上限額までに抑える方法
入院する前に、加入している医療保険から「限度額適用認定証」又は「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受け、医療機関の窓口でこれらの認定証を提示する必要があります。
⑥支給申請の期限→診療を受けた月の翌月の初日から2年
高額療養費制度は、制度設計が複雑ですね。

この記事をスタートにして、高額療養費制度の理解を深め、損することなく使い倒していただければ、とても嬉しいです。
「この場合はどうなのかな?」と思ったら、以下厚生労働省や全国健康保険協会のリンクで確認するか、加入している公的医療保険に問い合わせしましょう。
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