「お金を減らしてどうすんねん!」とタイトルだけを見て本書を手にとらないのは、もったいないです。
本書には、人生を楽しむお金の使い方が書かれています。
著者は、人気小説家の森博嗣氏です。そのため、他のマネー本に比べて、圧倒的に文章が読み易いです。
お金で大きな失敗をすると、その後の人生がきつくなります。
リカバリーが効けばよいのですが、避けられるものなら避けたい所。
そのため、本書は、学生さんや30代以下の方には、是が非でも一読していただきたいです。
以下の考えを持っている方も、本書を読むと格段に視界が広がります。
- 何であれ借金やローンを組むことを考えている方(本書を読んで立ち止まってほしい)
- お金は必要なものに使い、欲しいものを我慢する、という考えの方(本書では逆です)
- お金がない、時間がないが口癖の方(あなたが現状維持を望んでいる)
この記事では、本書を読んで、上記3つの点から知っておいてほしいと思うことや私の考えを紹介します。
記事を読んで、興味を持たれた方は、本書を手にしてみてくださいね。
借金地獄について、僕は助言ができない

「借金をするな」、以外に助言ができないと著者は言います。
経済的に困窮している人で、ローンの支払いが苦しい、という事例は一定数存在します。
ローンは最初に得を取ってしまい、ツケを未来の自分に回している行為です。
単なる分割払いではありません。
利子が載っている分、一括で支払うより多額のお金を支払うことになります。
収入に見合わない買い物をすると、後々苦しむ可能性があることは、肝に銘じておきましょう。
今から努力を重ねて、返済し、10年後に生活は改善するかもしれません。
すでに借金やローンを抱えているのに、「そんなことを言われても遅いよ」に対して、著者は、「そのとおり、遅いのである」

大きな失敗をする前に、借金の怖さを知っておきたいです。
私は、本書を読んで、「冷たい」とは感じましたが、事実でもあると思いました。
ローンを組む時に、大変な目に合うと分かっていれば、契約しなかったでしょう。
日本では、消費者金融の借金はダメだけど、住宅ローンや自動車ローンはOKという謎の風習が残っています。
学生の奨学金(貸与型)に至っては、借金ではない、という感覚すらあります。(私もその1人でした。)
どれも立派な借金で将来に渡って、利子を支払う行為であることには変わりありません。
借金して購入した物を手放したときに、借金がなくなる上に資産がプラスになる場合など、すべての借金がダメとは言い切れません。
しかし、そうではない場合、給料が下がる、会社が倒産する、病気など何かしらの事情で働けなくなる、といった理由で収入が今より大幅に下がることは誰しも起こり得ます。
それでも、自分が苦しむことにならないかは慎重に考えていきたいです。
私が学生の時に借りた奨学金は、無事完済できましたが、今思うと本当に無知だったし、何かしらの理由で返済が滞っていたらと思うとぞっとします。
何となく大丈夫で借金は地獄への片道切符です。
欲しいものは買う、必要なものはできるだけ我慢

著者は、結婚したときにパートナーとなった奥様に以下のように言ったそうです。
「僕は収入の1割を遊ぶために使う。奥様も1割を遊ぶために使いなさい。残りの8割で生活を維持していこう。」
そのため、収入の1割で自分の欲しいものを好き勝手に買っていたそうです。
どんなものを買おうがお互い口出しはしません。
著者と奥様はこれを自分の趣味や嗜好を守る「防衛費」と呼んでいました。
著者は、機関車のキットを買ったり、庭に線路を敷いたりするのに使ったそうです。
残りの8割は生活維持費で、著者と奥様の協議で使い道を決めるそうです。
著者は、将来のために貯金をしたかったので、できるかぎり出し渋ったそうです。
一日一食、おにぎりだけで充分。外食も一切しない。
その慎ましい生活に著者は、何の不満もなかったとのことです。
奥様はそうではなかったかもしれませんが。
お金の専門家ファイナンシャルプランナーに相談したら、「必要なものは買う、欲しいものはできるだけ我慢」と逆のことを言われそうですね。
しかし、「必要なものだから」が原因でお金を使い切ってしまうことはありえます。
住んでいる場所の家賃が高い、子供の教育費、友人との付き合いなど。
「これは仕方がない出費だ」、「惨めな思いはしたくない」と理由をつけてお金を減らしてはいないでしょうか。
著者は、「順番が逆」だと指摘します。
お金があるから、必要なものを買ってお金を減らすのではありません。
自分がやりたいことがあって、それを実現するためにお金を稼ぐのです。
自分の欲求を満たすために、自分の時間とエネルギーを差し出して(労働をして)、お金を得る。
そして、収入の1割(奥様と合わせて2割)を自分のしたいことにお金を使い、8割で生活をしていく。
背伸びをして借金をすると、自分のやりたいことを実現するための資金が残らないばかりか、借金の利子が将来の禍根になります。
「必要なものだから買う」は、多くの場合「他者と比較して惨めな思いをしたくないという言い訳」といえます。
お金がないのだから、惨めなのは当たり前と開き直ってもいいし、そもそも惨めと感じるのは自分が勝手に自分と他人を比較した主観です。

自分の欲しいものが分かっている人は、自分の幸せが何かを分かっているから、ブレないですね。
私は、「欲しいものは買う、必要なものはできるだけ我慢」というのは一理あると思いました。
欲しいものは、私の場合、豪華な食事や旅行などですが、これらを支払って手に入れた時は、満足度の高い時間を過ごすことができます。
必要なものは、私の場合、家賃や普段の食費、日用品の購入などですが、これらを支払って手に入れた嬉しさはありません。しょうがなく、支払うみたいな。
買おうとしているものが、欲しいものなのか、それとも、必要なものなのか、自分で明確に区別したいと思いました。
私の場合、パソコンやスマホなど欲しいものと必要なものがごっちゃになっている状態だと、無駄遣いの温床になりそうです。
お金(時間)がないから、やりたいことができません

「そんなの言い訳です。」
著者は言います。
本当に欲しい、やりたいなら、それを実現させるために、あらゆる方法を試して実現させます。
それこそ、お金が必要なら食費を削ったり、別の仕事をしたりする。
時間を確保するために、付き合いを断ったり、睡眠時間を削ったりする。
著者の場合、鉄道庭園を実現させるため、睡眠時間を削って小説を書き続けました。
それができないのであれば、結局そこまでしてやりたくはなかった、ということになります。
どうしても実現したいことがあるなら、ある程度の犠牲は差し出すべき、ということです。
人間は、望んだとおりの者になります。
欲しいもの、したいことがあれば必ず実現します。
そのための方法を考えて、行動し続けるからです。
無理かもしれない、と思うことはあっても継続すれば、近づき続けることは可能です。
途中で諦めるという道を選択したときは、それがしたいことになり、もちろん実現可能です。

どんな生き方をするかは、自由です。
ただし、「ノーペイン・ノーゲイン」です。
これも厳しい意見ですが、至極ごもっともだと思いました。
「お金、時間がないからやらない」は、「それほどやりたくない」と同じ意味だといえます。
自分で自分の実現したいことを潰しているようで、もったいないです。
私も、これを言い訳にして、ブログの開設というやりたいことを先延ばしにしていたので、偉そうなことは言えません。
リベラルアーツ大学の両学長から動画で「行動しいや」と繰り返しお尻を叩かれて、結局開設に至りました。(両学長については、下記で動画を紹介しています。)
「お金、時間がないからやらない」は、最もらしく聞こえるので使ってしまいがちです。
私は、言い訳ごときで、やりたいことを実現しないのは耐えられないので、この言葉は口にしないと決めました。
まとめ
この記事の内容をまとめます。
すでに借金やローンを抱えているのに、「そんなことを言われても遅いよ」に対して、著者は、「そのとおり、遅いのである」
借金をする前に、将来の自分が苦しむことにならないか、考えに考え抜きましょう。
自分がやりたいことがあって、それを実現するためにお金を稼ぐのです。
「必要なものだから買う」は、多くの場合「他者と比較して惨めな思いをしたくないという言い訳」といえます。
「そんなの言い訳です。」
結局そこまでやりたくはなかった、ということになります。
人間は、望んだとおりの者になります。
本書は、読み易いのは事実ですが、淡々とした口調で書かれているので、「冷淡だ」と思われる方もいるかもしれません。
そのため、癒しを求める方には合わないと思われます。
ただ、「奥様の壊れたミシンを直そうとしてさらに壊してしまった」、「奥様に良い顔をされないまま借金をして購入した絵が値上がりしてほっとしている」といったエピソードは、やはり人間だな、と思いました。
本書の内容すべてを真似できなくても、何か1つ良さそうな考え方を取り入れてみよう、と気軽に読んでみるのが良いと思います。

やらない理由を考えつくなら、結局は現状が一番良いことの裏返しです。
他にも、「基準は自分、他人と比較しない」、「お金があるから何か買いたい症候群」、「感謝をされる仕事がしたい症候群」といった思わずギクリとして、自らを省みる内容が記載されています。
興味を持たれた方は、本書を手に取ってみてくださいね。
リベラルアーツ大学の両学長のYouTubeでも紹介されています。
両学長は、好きな人と好きなときに、好きなことをする自由が欲しかった。
本書の著者の森博嗣氏は鉄道の線路を伸ばしたかった。
みなさんは、稼いで貯めたお金を何に交換したいですか。
コメント